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2007年5月26日 (土)

オールドファームとは何か?(その2:ベルファスト)

北アイルランドの首都ベルファスト。ロンドンから飛行機で約1時間の距離。

中心街にほど近いPolitical Districtと呼ばれるプロテスタントとカトリックのコミュニティには、政治的メッセージが込められたMuralと呼ばれる壁画が数多く存在する。

日本人にとってはテロに限定されたニュースの印象から治安について不安なイメージを抱きがちだが、現在のベルファストは、両コミュニティの抗争の現場までもが観光名所となっている。ここを回るには、観光バスBlack Taxisを使うのが便利。

Black Taxisとは地元のタクシードライバーによる観光案内で、コストは一台£25と観光バスの£10よりも値は張るが、希望を伝えればドライバーが柔軟に対応してくれる。じっくり話を聞けるのもメリットである。

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Black Taxiをチャーターして、まずはプロテスタント地区(Shankill Road)に行ってもらった。ここは低層住宅が並ぶコミュニティ。いたるところに壁画が目に付く。これらは普通の住宅の外壁に書かれているものだ。

17世紀にアイルランドに侵攻したオリバー・クロムウェルの画。プロテスタントにとっては開拓者、カトリックにとっては侵略者。

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1690年Battle of the Boyneでボイン川を渡るウィリアム3世 (イングランド王)。この戦いでイングランド支配が決定的となった。

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アルスター地方の旗(主にプロテスタント系が北アイルランド国旗として使うもの)の中心にもある「The Red Hand of Ulster」の伝承を表す壁画。アイルランドの伝説で王様が早く岸に着いた者に土地を与えるとした競争がその起源だそうだ。

これらの壁画はユニオニスト・ロイヤリストのルーツを表している。そして周辺にはこれら以上にたくさんの政治的壁画がある。

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亡くなったロイヤリスト・ユニオニスト活動家の壁画が多い。

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ライフルを構える活動家。この地区に入ってくるカトリック・ナショナリストへの警告だそうだ。

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ロイヤリスト・ユニオニストグループを表す壁画も多い。

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「アルスターはずっと英国に留まる」。「NO SURRENDER」は彼らの合い言葉。転じてRangersファンがチャントで歌うこともある。

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この後、隣り合うプロテスタント・カトリック地区を隔てる壁(Peace Lines)に。途中に何カ所かゲートがあるが日中でも閉じられている。現在は昔のような抗争があるわけではないが、安全上の観点からゲートは閉じているとのこと。

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当然のことながら壁を迂回すれば両地区に出入りすることは可能だが、トラブルを起こすために行動する人はいない。ベルファストに住んでいれば、例えば職場などで両コミュニティの人が一緒に働くこともあるわけだが、当たり前だが、普通に接している。ただ、飲みに行くときは、中立的な中心街に行くことが多くなるそうだ。

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続いて、カトリック地区(Falls Road)。これは有名なPeace Wall。

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北アイルランドのマイノリティ、カトリック系住民はその抑圧の歴史から同じような境遇を体験してきたパレスチナと連帯意識がある。また、ゲバラやカストロなど革命家の壁画に見られるように左翼的思想とも親和性が高い。ちょうど、ロイヤリストが右翼的なのと対照的である。

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したがって反ブッシュ。これはブッシュがアラブ諸国に戦争を仕掛けて石油を搾取しているとする壁画。

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ちなみに、案内をしてくれたドライバーはプロテスタント地区の出身。実はChelseaの熱狂的なファンで、年数回ロンドンに来るとのこと。当然Rangersのファンでもあり、サッカー話でとても盛り上がってしまった。おかげで、コミュニティとサッカーの関係については色々と聞くことが出来たが、カトリック地区については重要な壁画をいくつか見逃してしまった。

なお、全国的な人気クラブとなったChelseaはカトリックからのサポートも受けているそうで、実際、カトリック地区でChelseaユニを複数見かけた。

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サッカー話で盛り上がったついでに、ベルファストのサッカークラブLinfield FCのホームスタジアムにも寄ってもらった。このクラブはRangers・Chelseaとともにロイヤリストのサポートを受ける北アイルランドリーグの強豪。ユニの色もRangers・Chelseaと同じロイヤル・ブルー。

エンブレムのお城はロンドン郊外のウィンザー城(女王陛下の住まい)であり、ホームグラウンド名のWindsor Parkとともに英国連合を強く意識したさまから、クラブの生い立ちが北アイルランドの歴史と無縁でないことが分かる。

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なお、このスタジアムは北アイルランド代表のホームでもある。代表チームも国の生い立ちからプロテスタントの強いサポートを受けているが、イングランドへの対抗意識も強く、イングランド戦は信じられないくらいの盛り上がりを見せるそうだ。これは、Linfield FCと代表チームをサポートする壁画。

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左は、2005年9月7日W杯予選イングランド戦で1-0勝利、右は2006年9月6日ユーロ予選スペイン戦で3-2勝利したことを表している。北アイルランドは強豪の揃うユーロ予選F組で現在首位である。

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2005年のイングランド戦の勝利以降、北アイルランド代表へのサポートが大きくなりつつあり、関係者・ファンの努力もあって両コミュニティの融合に一役買っているようだ。確かにスポーツが政治的対立の緩和に貢献した例はいくつもある。代表の躍進と共に北アイルランド問題の解決が促進されることを願う。

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最後に別のプロテスタント地区(Sandy Row)に。

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赤白青に塗られた歩道と電柱。これはユニオン・ジャックの3色を意味し、ここはユニオニスト地区だという警告。

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中心街の警察署。厳重なゲートに抗争の歴史がかいま見える。写真を取り損ねたが、カトリック・コミュニティ内の警察署はここ以上の完全な要塞だった。こんな造りだけど今ではこの周辺を含め市内は安全である。もちろん治安の悪そうなところはあるが、それはどこの街も同じ。

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近くのウォータフロントは良い散歩道となっている。

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両コミュニティがベルファストを代表する観光地となり始めたのは約10年前。今ではバスやタクシーで観光客が訪れ、写真を撮る姿がよく見られる。

政治的な対立は過去のものとなり、現在はEUでもワーストに近い貧困や犯罪が問題となっている。宗教対立がオールドファームで表面化しているという点からすると、ベルファストよりもむしろグラスゴーの方が問題だろう。

次回は北アイルランド紛争のもうひとつの舞台、ロンドンデリー。

 

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コメント

Different people in all countries take the personal loans in various banks, just because that's comfortable and fast.

投稿: CaitlinFields | 2012年6月28日 (木) 14時20分

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