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2007年5月28日 (月)

オールドファームとは何か?(その4:オールドファームの現在と未来)

ベルファストとロンドンデリーでは、両コミュニティの激しい抗争の爪あとを数多く見ることが出来たが、今の北アイルランドにオールドファームで見るような憎悪があるわけではない。オールドファームの日にスタジアムに行けば、言葉さえ理解できれば、そこがどんなひどい環境か分かる。

BBCの番組で、The Herald紙の記者が言っている。「もしあなたが土曜日の午後にとつぜんRangersかCelticのスタジアムに放り込まれたら、邪悪でひどいチャントを聞くだろう。無知で、無教養の偏見に満ちた感情をテラスから受けるだろう。そしてここがとんでもなく野蛮な社会だと思うだろう。」

なんでオールドファームは未だに深刻な対立を抱えているのだろうか?

結局、両クラブのファンが持っているお互いへの差別的な感情を発露する場所を、オールドファームという舞台が提供しているからだろう。

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CelticとRangersの両会長がインタビューに答えて、セクタリアニズムに及ぶファンは「ごく少数」と言っていたが、明らかに事実とは反する。

Rangersファンは総じて熱狂的だが、単に熱狂的というだけでなく、事実、カトリックへの差別を含んだチャントを歌う者もたくさんいる。

毎試合、近くに座っていた紳士はいつも静かに観戦していた。その彼がオールドファームの時にはCelticファンに対して「手をかざす」ナチス式の敬礼をしていた。これは別にナチの敬礼ではなくて、アルスター旗の中心にある「Red Hand」の敬礼なのだが、カトリック・ナショナリストに対しては非常に攻撃的な行為である。

普通のファンでもCelticを前にするとそうした行動に出る事実、そして彼だけでなく、多くの両チームのファンがそうしたお互いを侮蔑する行為に出ている現実があることは認識しておくべきだろう。

両クラブはスタジアムでの政治的行為を禁じ、セクタリアニズムは2003年から違法行為となった。今はスタジアムで差別的チャントを歌うと即座に警官に連行される。しかし、スタジアムからそうしたチャントが排除されても、試合帰りの地下鉄に乗れば聞くことが出来る。結局、お互いの差別意識は色んな形で残っている。

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現在、両クラブはスコットランド政府とも協働して、セクタリアニズムの排除に向けて運動を行っている。BBC番組にもあった子供達への教育もその一環である。BBCの番組で、刑務所で服役中の両ファンは子供の時から差別感情を持ち始めたと言っている。今も残る差別をどう押さえて、そして、将来への連鎖をどう断ち切るかが課題だろう。

2年間、英国のスタジアムを数多く訪問して、どこのスタジアムも非常に安全であると実感した。時にやりすぎと思うくらいだが、危険な予兆があれば直ぐに警察が介入し排除する。群衆のコントロールもうまい。スタジアムとその周辺に限れば、英国は欧州一安全だろう。警察・スチュワードの取り締まりが緩い分、時には日本のスタジアムの方が危険かもしれない。もちろんこの安全は、フーリガニズムが教訓になっているわけだが。

だが、オールドファームの対立の根は単なるフーリガニズムよりもはるかに深い。貧困や犯罪などの社会問題とも無縁ではない。しかし、この国には大きな問題に正面から取り組むことができる政治家・メディア・国民がいる。

「オールドファームの宗教対立って何だ?」という素朴な疑問から調べてみたこの問題、単に信仰の違いというよりは、北アイルランドの宗教・人種・政治問題がグラスゴーに移って、それがスタジアムとその周辺で時に吹き出しているものだ。

Celtic・Rangersファンのクラブへの思いはどこよりも強い。その思いだけでも十分ダービーの雰囲気は作り出せるはずだ。関係者の努力が実を結んでセクタリアニズムが影を潜めた時、それが自分が生きている間に実現するか分からないが、その時にもう一度オールドファームを見に来たい。その時にこそ、この試合が世界一のダービーだと思えるだろう。

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コメント

ロングコラム、楽しみました。日本ではあまり語ろうとしない宗教というカテゴリーの話、これほど根が深いとは思いませんでした。オールドファームはやはり一度は行ってみたい。単純にそう思っていました自分は少し考え方を変えないと。重たいですな。
これもgersさんが何度も体験したダービーマッチだからこそ達せられる結論なのかもしれませんね。勉強になりました。

投稿: m-mizoo | 2007年5月31日 (木) 23時16分

世界的に有名なダービー、誰もが見たいと思うのは当然じゃないでしょうか。ここに限らず自分のクラブじゃないところにお邪魔するときには、ホームチームを応援するといった、それなりのリスペクトを示そうと心がけています。それで良いんじゃないでしょうか。

だだ、Ibroxでのオールドファームだけは、Rangersを何試合見ても自分が場違いな感じは消えませんでしたね。それが今回、両者の対立を考えるきっかけになったわけですが。

今はCelticに中村がいるので、日本人が歓迎されるCeltic Parkでダービーを見る良いチャンスだと思います。ただ私はRangersのシーチケを所持してからはCeltic Parkには一切行きませんでした。それもRangersに対するリスペクトの一環だと思って。

投稿: gers | 2007年6月 1日 (金) 01時44分

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